2012年09月12日
前回、広島県のゴマシジミにかこつけて、無理やり○○協会さんについて言及したのは、理由があります。
それは先日、○○協会さんのホームページにUPされた平成24年8月付けの文章を読んだからなんです。
読んでる途中に、思わずこう呟いてしまいました。
「パクッたらアカンでしょう、○○協会さん…」
私は、G社側から許可を受けたうえで分布図を載せたのだと思っていました。
ところが実際は、「日本*****図鑑」の分布図を「許諾を得ずに」(早く言えば無断って事ですよね)引用し、
最近のデータを元に修正し作成した図を「******** 日本のチョウ」に載せたと自身のWEBページでおっしゃっています。
けど、これって、とってもイケナイことですよね。
理系出身者が多いと推定される著者集団が、サイエンスの世界では、最もやってはいけない行為をしておきながら、
数ヵ月後に自身のWEBページでシレッとお詫びの文章を掲載し、これでオシマイ、幕引きなんでしょうかぁ?
本例のように違法とまでは言えないかもしれないけれども、守るべきルールを意図的に無視する○○協会の方に、
「ゴマシジミを苛めているオヤジだの、いまだに採ってるような
蝶屋の考え方を改めさせてやる…」
なーんて言われたくありません。
それはさておき、パクッた分布図が各ページに挿入された「******** 日本のチョウ」について、
ここで感想等を述べておきましょう。
全体としては、今までにない画期的なフィールド・ガイドだと思います。
けれども上記で問題にした分布図を含め、サラッとしか読んでいない現時点でも、気付いてしまう突っ込みどころが散見されました。
なので、これら突っ込みどころを羅列しておきましょう。
・へぇ〜、タッパンルリシジミは無視なんだ
あまり記録されていないアカネアゲハ等の迷蝶が載ってないのは理解できますが、
本種は土着説もあるうえに、これまでに採集された数もけっこう多いのに、何故、
完全無視なんでしょうか。日本国内で撮った生態画像が無かったからなのかなぁ?
言ってくだされば、コレを撮影された方をご紹介したのに…。
けれども、ミナミコモンマダラについてはオーストラリアで撮った生態画像をお使い
になってるし…、掲載基準が分かりません。
あと、完全無視されている種で、少しは言及しておくべきと思ったのは、コモンタイマイ、
ムラサキオナガウラナミシジミの2種が挙げられます。
・「開発されやすい平地では少なくなっている」
↑これって、どの種について書かれたものだと思われますか?
なんと、ヒメシルビアシジミの【生息状況・保全】の項目に、こう書かれていたんですよ。
こうまでして危機を煽りたいのかなぁ〜。
・オオムラサキの項に京都府南山城村の天然記念物と表記
M社のWEBページに掲載された間違った情報をそのまま掲載。
○○協会側の目指すところに沿った規制なら、調べもせずにドンドン書いてしまおう、
…ってことなんだ。
・やっぱり分布図が…
本書の冒頭、用語解説のページで示された本土の定義は、「北海道、本州、四国、
九州の4島のこと。周辺離島や南西諸島、小笠原諸島は含まれない。」とあります。
また、○○協会WEBページにUPされたお詫びの文章では、「日本*****図鑑」
から「本土に分布するチョウの分布図」を引用したとあります。
従いまして、島嶼部分の分布は○○協会さん側がお調べになって記載されたと理解
できます。けれども、これがけっこう杜撰。
2012年09月03日付けPDFファイルの正誤表で、ある程度訂正されていますが、
これに加え、チョッと読んだだけでも2ヶ所の疑問点に気付きました。
一つは山口県萩市見島にシルビアシジミは分布していないことになっていますが
これは間違い、分布しています。
もう一つはヒメシルビアシジミがトカラ列島全島に加え、屋久島にまで土着分布して
いる事になっています。これってホンマなの?この知見はどの文献に書かれていた
のでしょうか。とっても読みたいので、出典を教えていただきたいものです。
以上、つまらないことをだらだらと書き連ねましたが、正直な感想を申し上げれば、とても良い本だと思います。
巻末に挙げられた写真提供・協力者の中には、尊敬している方や存じ上げている方々のお名前が多く見られます。
これら各氏は「良い本を作ろう」という純粋な気持ちで写真提供・協力を惜しまれなかったのでしょう。
ほんとうに素晴らしい生態写真が満載だし、この本を片手に野外で種の同定をするのにも画期的な表現がなされていると思います。
それだけに、分布図の無断引用が残念です。
最後に、私の方からこう書いても素直に聞いていただけないとは思いますが、版を重ねる機会がありますれば、
上記の突っ込みどころご吟味いただき、より良い内容に進化する事を願っております。
2012年09月15日
広島県のゴマシジミについて09月10日に、
「この1頭をお持ち帰りしてしまうと来年はもう居なくなっているかもしれない…」
と感じた理由を書いておきましょう。
2007年 08月 26日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
↑の画像は5年前(2007年)の撮影、大きなクリの在る斜面はゴマシジミにとって良好な状態、即ちワレモコウが多く生え、
ハギ、キキョウ、ツリガネニンジンの花も咲いておりました。画像右の方に小さく写っている草原も同様の良好な状態で、
ゴマシジミは両方の草原で見られ、都合3頭のお持ち帰りでした。
このときには、この2つの草原が安定的に維持管理されそうな予感が有り、これからしばらくは安泰だろうと思っておりました。
次の2008年は他の場所を探索していたので当地へは訪問しておらず、画像がありません。
2009年 08月 13日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
そして↑が2009年の撮影。
画面右側の草原は短く刈り込まれていますが、画面中央、大きなクリの在る斜面は良い草原状態が維持されています。
この日は画面中央の斜面に入り、ゴマシジミの採集を試みたのですが1頭も見られませんでした。ただし、
日付が08月13日であったことから、未発生の可能性が高かったと推定しています。
また、画像下部の道路付近を注視していだくと木の標識杭が設置されています。ということで、ココは工事予定地であることが覗えます。
2009年 08月 13日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
ここ↑が当地のゴマシジミ、最北確認地点になります。
残念な事に、農道の拡幅工事をしている旨の看板が設置されていますね。
2009年 08月 13日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
本画像の道路と耕作地の間が、線的なゴマシジミの生息草原だったのですが、この2009年08月13日という日付で既に、
ゴマシジミの生息草原を潰す作業が始まっていました。
2012年09月18日
そして翌年、2010年08月22日に同地を訪れてみたところ、
2010年 08月 22日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
↑のような状態になっておりました。
ゴマシジミが生息していた斜面は一旦削られ、ご覧のように他所から持ち込まれた砕石等で覆われています。
こうなってしまうとゴマシジミは生息できません。
結果、道路沿いに線的に在った生息地がなくなってしまった訳です。
当字名内の生息地は、大きなクリの在る斜面の他に、民家背後の刈り込まれた斜面や、
民家敷地内に入らせて頂かなければ到達できない狭小な谷の耕作地周りといった、極小の生息地が3ヶ所ありました。
2010年に潰れてしまったこの道路沿いの生息地は、これら極小の生息地を繋ぐ生態的回廊としても機能しているのではないか?
と良好な状態で生息していた当時から推定していました。
2010年 08月 22日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
ところが2010年08月22日に生態的回廊と推定していた生息地の消失を目の当たりにして
「これで極小の各生息地は孤立、絶滅は近いな…」と思い、09月10日書いた
「この1頭をお持ち帰りしてしまうと来年はもう居なくなっているかもしれない…」というフレーズにつながるのです。
因みに、↑の画像内手前の状態の良い斜面が09月10日に貼った標本画像個体を採集した場所になります。
2011年 08月 28日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
↑は、安定的に維持管理されるであろうと推定していた大きなクリの在る斜面を含む2つの草原を2011年08月28日に撮影したものです。
この年既に、同字名内の過去に生息していた場所の全てでゴマシジミを確認できていません。
2012年 08月 26日 広島県神石郡神石高原町(旧神石町)
そして↑が今年、2012年08月26日に同所を撮影したものです。
これまでの一連の画像をよく見ると、2つの斜面が同時に刈り込まれた年はないようです。しかも同じ斜面を2年連続というのではなく、
隔年ごとに刈り込みがなされています。
このような刈り込み方法が執られたおかげで、最も近年までゴマシジミの生息が可能だったのでしょうね。
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