2018年の近況集19

  • 2018年11月14日

     前回貼った [ふしみやDBテキストのみ版] の各レコード内の備考欄で、
     「当日は光進駅泊。バーナーを倒して駅舎を燃やしかけた。」
    とあります。
     これって、どーゆー事なのかと申しますと…。

     光進駅というのはかなり以前に廃線になった標津線の無人駅です。この日はここで寝るべく、電灯の無い真っ暗な待合室と言うか小屋の中で電池切れ寸前のヘッドランプを装着し、 夕食の支度 (と言ってもカップ麺用のお湯を沸かすだけですが) の為、ホエーブス (当時の登山関係者の装備品、ガソリンバーナーです) を点火した後、 「コッヘルは何処かいなぁー」 と探している間にホエーブスを倒してしまったのですよ。
     この加圧が十分であるところの点火中のホエーブスを倒すとどーなるか?
     やったことのある方はご存知でしょうが、メラメラ燃えるオレンジ色の炎が5m程の長さで水平に噴射されるのです。
     いやー、驚きました。そしてこのオレンジ色の光で突如明るくなった結果、それまで見えてなかった待合室内の光景が目に飛び込んで来たのです。
     なんと、とっても燃え易そうな紙屑等のゴミが待合室の隅っこに寄せ集められていたのですよ、しかもけっこうな量で。
     この瞬間、もう真っ青ですわ。
      「あの方向に火炎噴射が向いてしまったら、確実に火事やん!」
     という事で、ホエーブスを外へと必死で蹴り出し、どーやってそうできたのかよく憶えていませんがホエーブスをちゃんと立ててから、 吹きあがる炎を鎮めるべくバーナーヘッドを載せて (これもどーやってできたのかよく憶えていない) 何とか消火完了。
     もう、ドキドキでございましたわ。

     あー、いかんなぁ。
     学生の頃を思い出すと、書くべきことをほったらかして、どうでもいい事を書いてしまう。こういうのが、歳をとったということなんでしょうね。
     次回こそは Pieris 3種の件について、何ぞ書かなアカンな…。

     

  • 2018年11月17日

     ↓の画像は再掲載、Pieris 3種…、だと思います。

  •  その3種だと思う種名も再掲載しておきますね。

       エゾスジグロシロチョウ   Pieris dulcinea  以下 「エゾ」 と略します。
       ヤマトスジグロシロチョウ  Pieris nesis  以下 「ヤマト」 と略します。
       スジグロシロチョウ     Pieris melete  以下 「ナミ」 と略します。

     
     初めにお断りしておきますが、やっぱり、よー判らんのですわ。
     ですから、以下の内容は読み飛ばしが妥当なところかなっ、と…。

     

     ↑も再掲載になります。最初に貼った3個体の内、右端個体の表裏です。
     この個体の正確な採集地は [北海道十勝郡浦幌町字厚内国鉄上厚内駅北東厚内川付近] ということなので、 学研の標準図鑑、62ページと63ページの分布図によると、この採集地点では 「エゾ」 と 「ナミ」 しか分布しないことになっています。
     そして同じく61ページの 「エゾ」 の解説文に 、
       『前翅裏面中室全面がふつう白色であることによって(まれに暗色鱗を散布して
        スジグロシロチョウとまぎらわしい個体があるが、スジグロシロチョウは
        全面白色とならない)区別される。』
    と記されているので、この個体は 「エゾ」 、即ち、エゾスジグロシロチョウ Pieris dulcinea という事でよいと思います。
     これについてはかなりスッキリしたのですが、ややこしいのは残る2個体。

     

     ↑は最初に貼った3個体の左端、京都府京都市左京区岩倉長谷町産の個体になります。
     この産地には 「エゾ」 が分布していないので、 「ヤマト」 か 「ナミ」 のどちらかという事になるのですが、 この文章を書くために各文献を調べていると、日本国内の 「ヤマト」 には亜種が存在しておりました。即ち、
     ・本州山形県以北に産する本州北部・北海道亜種 (名義タイプ亜種) Pieris nesis nesis
      以下 「北ヤマト」 と略します。
     ・本州山形県以南に産する本州中・南部亜種 Pieris nesis japonica
      以下 「南ヤマト」 と略します。
    という2亜種に分かれていたんですね〜、知りませんでした。

     で、この個体は 「ナミ」 なのか 「南ヤマト」 なのかという事になるのですが、
      「南ヤマト」 ≒ 学研の標準図鑑で示される以前の本州中南部産エゾスジグロシロチョウ
    と考えてもよいと思うので、過去の図鑑 [保育社の原色日本蝶類図鑑(全改訂新版1976年)、ニュー・サイエンス社の図説日本の蝶] で示された理解し易い区別点と、 学研の標準図鑑に記されている区別点とで判断してみると…。
     ・前翅頂表面の黒斑が発達している。
     ・前翅基部黒色鱗粉の散布状態については、これを欠いてはおらず明らかに存在している。
     ・前翅裏面中室の黒色鱗粉はよく発達し、暗色に見える。
     ・前翅裏面1a室に黒色鱗粉が明らかに認められる。
     ・肩脈(赤い矢印)の状態が 「北ヤマト」 「南ヤマト」 より長く外方へのび、
      先端は鋭くとがり明瞭である…。って、これはイマイチよく判らん。
     これらのことから、この個体は 「ナミ」 、即ち、スジグロシロチョウ Pieris melete と判断しました。

     ここまで書いて、かなり疲れたので最もややこしい真ん中の個体については次回へ繰り越します。

     

  • 2018年11月20日

     今日は最もややこしい真ん中の個体についてです。

  •  何故ややこしいのかと申しますと、採集地点がですね [北海道札幌市南区砥山八剣山(観音岩山)南麓] なので、 「エゾ」 「ヤマト(北ヤマト)」 「ナミ」 の3種が混棲する地域といわれているからなのです。

     実際のところ、私の実力 (タッパンなのにヤクルリだと思い込んで冷蔵庫に放置した前科あり) では、ホンマよーわからんのです…。
     けど、この話でここまで引っぱったのですから、同定から逃げる訳にはいきませんよね。
     それでは意を決してやってみましょう。

     学研の標準図鑑62ページの 「ヤマト」 の解説中に
      『春型では、スジグロシロチョウとの区別は一層困難に見えるが、後翅裏面基部にある
       肩脈の状態で容易に判別できる。すなわち、本種の肩脈は短く先端が不明瞭であるが、
       スジグロシロチョウでは、より長く外方へのび、先端は鋭くとがりより明瞭である。』
    と記述されています。
     前回貼った 「ナミ」 と判断した個体と比べると、この個体の肩脈は先端がぼんやりした感じに見えます。
     また、同じく学研の標準図鑑62ページの 「ヤマト」 の解説中に
      『北海道産は同地に混飛するスジグロシロチョウとは大きさおよび斑紋のいくらかの
       ちがいのほかに、前翅裏面中室全面が白色であることによって (まれに暗色鱗を
       散布してスジグロシロチョウとまぎらわしい個体があるが、全面白色であれば
       本種と断定してまちがいない
    ) 区別される。』
    と記されているので、上に貼った個体はヤマトスジグロシロチョウ(北ヤマトPieris nesis nesis) だと決定したいところなのですが、同ページ 「ヤマト」 の解説文中に、
      『エゾスジグロシロチョウとの違いは、北海道産において裏面黒条が広いという傾向
       はあるが、形態的には絶対的な区別点はない。
    とも書いてあるのです。
     という事は、上に貼った個体が 「ナミ」 ではないと判断できるけれども、 「エゾ」 なのか 「ヤマト(北ヤマト)」 なのかをきっちり区別するのは 『無理』 ということなんですね〜。

     「なーんだ、結局判らずじまいやんかいさー」 という結果になってしまったのですが、この個体の種名を私なりに無理やり決定するとすれば、 裏面黒条の雰囲気が学研の標準図鑑56ページ内で 「エゾ」 とされている21−4の個体よりも、 「ヤマト」 とされている21−13の方に近いと思うので、上に貼った個体はヤマトスジグロシロチョウ(北ヤマトPieris nesis nesis) としておきたいと思います。

     …と、昨日ここまで書いていたのですが、今朝来ていたメールで、前回トップに貼ったPieris3種として並べた画像の 「左個体はヤマトスジグロではないか」 とのご意見をベテラン蝶屋さんから賜ったのですよ。
     う〜ん、そう言われればそんな気もしてきたなぁ。
     けど、やっぱり、よくわかりませんわ。
     この話題に踏み込まなければよかった…。